このところ20年以上前に設計した住宅の改修工事のお話をいただく機会がありました。それはそれで、設計を行った建築を改めて振り返る機会となり、いろいろと勉強になることがあります。

改修住宅に設置されていた「Vola111」とは、デンマークのボラ社の水栓で、建築家やデザイナーとして有名なアルネ・ヤコブセンがデザインした水栓で、50年以上前にデザインされました。写真を見てもらえるとわかるように、そのデザインに似せた水栓は数多くあり、そのオリジナルとも言われています。

今回の改修では、少し前から、水栓の操作部から水漏れがあるとのことで、交換を検討していました。しかし、実際交換を検討し始めたところ、施主はこの水栓のデザインをとても気に入っていて、同じものへ交換することも気持ちは複雑なので、部品交換できないかと調べたところ、交換ができることがわかったのです。

日本製の多くのものは10年くらいたってしまうと、部品もなくなってしまうのが常です。しかし「Vola111」20年前以上まえに設置したとはいえ、デザインが変わっていないために、部品交換ができるのです。デザイナーはデザインした数年後に亡くなりましたが、50年も変わらなずに愛されるデザイン、そして使い続けられるデザインを改めて認識し、50年経っても変わらぬデザインのすごさに感激をしました。

今回同じような話で、ヨーロッパのプロダクトで、バウマンのバーチカルブラインドの金具も、２０年以上前のものでも交換が可能なことが判明。日本製に比べて、本当にシンプルデザインされているけからなのか？？簡単に変わらない精神と文化にこちらも驚きました。

木内厚子　スタジオエイト設計室