暮らしに会いに
11年経って「住み心地はどうですか?」建築家と建てた住まいを訪問
海と山が見える絶好のロケーションを選んだら、朝の日差しで目覚めて、そのまま愛犬と出勤前の散歩。
食卓には地元のおいしいい食材で健康な毎日に(ご主人)
マリンスポーツが趣味でインドネシアのバリ島に何度も通われていたHさんご夫妻。「家を建てよう」と決めたときのコンセプトも“バリのコテージ”でした。
茶色と白と植栽の緑をベースにしたお住まいのメインはリビング。南側は全面窓で開放的、ソファやテーブルはバリで製作したシックなデザイン、フラットに繋がるウッドデッキはご友人とバーベキューを楽しんだり「昼寝も気持ちいいんですよ」(奥様)。室内で目を引くのは大きな葉を伸ばすストレリチアオーガスタ、リビング階段とロフトのある吹き抜けスペース。天窓があり「ごろりと星を眺めたり、時には読書も」(ご主人)、「友だちも楽しいって言ってる」とお嬢さんの遊び場にもなるロフトはスケルトンで、天窓の光を1階まで届けます。
【スケルトンのロフト】
自然の恵みは住まいだけではありません。「以前はスーパーやコンビニで買い物していた」生活から一転、「お魚は知り合いの漁師さんから頂いたり、お野菜も直売所や農家から。春はキャベツにわかめ、もうすぐひじきがおいしい時期ですし、梅干しは手作り、娘も好き嫌いがなく、旬の味を楽しんでいます」(奥様)。
【リビング】
白いタイル、茶色いインテリア、そして緑あふれる植栽は大好きなバリのコテージがモチーフ。
開放感はあるけれど落ち着く、ストレスのない生活に満足しています。
間柱をデザインに活かした壁にご主人が板を足してお嬢さんの書棚を作るなど、手を加えることはしていても「使いやすいのでこの11年間、特に何も変えていません」(ご夫妻)。なぜなら「動線や収納などが、よく工夫されているから」。食品庫を要望したら、その裏に大容量の納戸、ロフト裏のスペースも収納に使っている。洗濯して干してクローゼットにしまう動線も短くて便利。実は「掃除もしやすいんです」(奥様)。床に置かれた家具が少ないこともありますが「仕切りが少ないからラク、犬の毛があるのに全然苦になりません」。
バリにちなんだ名前を持つお嬢さんと「近いうちに再訪できたら」とご夫妻。もしかしたら、バリの自然にご自宅と同じ薫りを感じるかもしれませんね。
【階段】
Editor's Eye
光を通す「耐力壁」=パンチングメタル
Hさんの家はオープンな設計だが階段部分はどうしても構造上、壁が必要。そこで木内さんはスチールのパンチングメタルを特注、強度は確保し、光と風を通す壁に変えた。天窓からの光が溢れる壁は、ご家族の写真やお嬢さんの絵画のギャラリーになっている。
ギャラリー
間取り図
家づくりの流れ
- 2002年
- 土地を探し始める
- 2002年10月
- 土地購入
- 2002年10月
- 木内さんと契約
- 2003年8月
- 着工
- 2004年3月
- 竣工
引き渡し
お住まいのDATA
所在地:神奈川県横須賀市
家族構成:夫婦+子ども1人+愛犬
敷地面積:170m2(51.52坪)
建築面積:49.69m2(15坪)
延床面積:96.602(29.36坪)
工法構造:木造軸組工法
竣工年月:2004年3月
取材後記
Hさんの家は竣工してから10年を経た住宅です。もう何年も訪れていなかったため、ご家族の様子は季節の葉書で知るものの、住宅の様子はどうなっているのだろうかと、ドキドキした気持ちもありながら始まった取材でした。
建築家は自分の作品をつくるのでしょうと、皮肉混じりに言われることもありますが、いえいえそんなことはなく、施主や敷地(環境)、そして私たち建築家がうまい具合にマッチして、よい建築はできるのだと思っていて、それが時を経ても実感できたことが、何よりもうれしかったです。また、敷地の状況や予算的なものなど厳しい条件であった住宅ではありましたが、いろいろな設計の工夫や、施主の暮らし方により多くの可能性があるのだと、改めて感じるよい機会となりました。ご協力ありがとうございました。